単なる憧れに過ぎない

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 その他大勢という粗末な存在が嫌なのは、俺だけではないはずだ。  それなのに、どうして多くで集まって、同じ話題を繰り返し、喜んでいるんだろう? 悠紀にはそういった疑問が絶えなかった。 もしかしたら、皆は本当はそこまで憧れを持っているわけでなく、ただ周囲の人間が騒いでいるから、自分も騒いでいるだけなのか? それはいくら何でも思考が幼稚過ぎるだろう、と悠紀は自分に言い聞かせた。 彼らは本当に憧れていて、本当にそうなのだ。 "その他大勢"から逸することは、自分なんかでは到底出来たものではない。 皆が皆、そう思っているわけではないのも真理だが、中にはそう思っている者もいないことはないだろう。 悠紀でさえ、そうだ。 入社してまもなく、まだまだ実力も備わっていない奴が、彼の右腕となることを望んでいる。 おこがましいというか、身の程知らずというか。ある意味無謀でもある。 知りつつも、悠紀の憧れの念は日に日に強くなる一方なのであった。
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