単なる憧れに過ぎない

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今日もまたいつものように会社へ赴く。 いつものように同僚達に簡単な挨拶を済ませ、それから、遠藤に挨拶をする。 「おはようございます。部長」 「ああ」 遠藤は悠紀に向かって非常に簡単な返事をすると、早急に悠紀の横をすり抜けて行った。 背中のほうから悠紀より後に来た同僚の挨拶をする声が聞こえてくる。 遠藤はそれら一人一人に悠紀と同様の返事をしながら部署を後にした。 現段階では、誰にも言わずとも悠紀は"その他大勢"、つまり部下の一人に過ぎなかった。 誰にも言わないことよりも、誰よりも仕事を有能にこなしていくことのほうが重要である。 これを達成出来れば、一気に大勢を逸することが出来る。 これが実に苦労を要するものであることは誰もが承知している事実だ。 勿論、悠紀も認めてもらえるよう黙々と業務に励む日々であったが、キャリアの壁とは意外にも大きいものである。 悠紀の配属された部署は、当然だが誰もが新入りなわけではなく、それなりの経歴を持った先輩もいる。 この先輩達を越えることが悠紀の一つの壁であった。
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