一つの機会

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「…はあ」 通常の勤務終了時刻を既に何時間も超え、時計は21時半を少し過ぎたところを指していた。 他の者は仕事を終え、無情にも帰路についてしまっている。 しんと静まり返った、小綺麗にグレーや青などのシンプルな色合いで統一されているオフィス内をぐるりと見回す。 人がいるのといないのでは、驚く程見える景色が変わることに悠紀は感嘆した。 ふと、遠藤のデスクが悠紀の目に留まった。 その大きなデスクの上はとても几帳面に書類がまとめられており、何がどこにあるか、すぐに判別出来るような配慮が施されている。 無駄なものも一切机上には置かれていないようだ。 悠紀は遠藤本人と直接関わることが少なかったが、デスクの状態から、遠藤という人物の性格を垣間見たような気がした。 そんなちょっとした休憩を挟みながら、僅かに残っていた今日のぶんの仕事を片付けると、悠紀もやっとのことで家に帰ることが許された。 ポケットから携帯を取り出し、時間を確認すると、時刻は23時を上回っていた。 「うわ…電車!」 携帯をポケットにしまいこむと、鞄を抱え急いでオフィスを後にした。
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