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「死なない奴、殺せない奴なんてこの世にいねぇさ」
少年の思惑通りその言葉に足を止めた男だが、それだけ言い残すと少年の事が気にならないのか興味の無い素振りでまた歩き出そうと足を動かす。
「離せクソガキ」
しかし、立ち去ろうと一歩を踏み出したその時、突然後ろからコートの裾を引っ張られ男は少年の方を見ないまま鬱陶しそうに冷たい言葉をぶつけた。
「嫌だ!」
少年は男の少しトゲのある言葉に怯む事無く、ぐっと目を閉じ反発するかのように力強くそう言うと、離すまいと裾をつかむ手に力を入れる。
「離せっつってんだろ!俺はガキのおもりしてるほど暇じゃねぇんだよ!」
男は引き下がるどころかさらに強く裾を掴む少年にイラついた様で、少年の方へ振り向き眉間にシワを寄せながら少し興奮気味に声を張り上げた。
「俺は行く所がない!一人だ……みんな殺されたんだ!」
「あぁ!?だからなんなんだってんだ!?」
だが、少年は男の荒い言葉、表情にも引く事無く、目に涙を浮かべながら訴えかけるように男を見つめ、男も徐々に興奮して来たようで少年を睨みつけ裾を掴む手を振りほどこうとする。
この男は非情にもこの少年をここに見捨てていくつもりだったのだ。
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