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一体何を考えているのか……いや、何も考えていないのだろう。
大の大人が、こんな危険な場所で子供を見捨てるなど、普通なら考られない事だ。
良心や人としての心を持ち合わせていないのかと疑ってしまう。
一方、家族を失い、住む場所を奪われ帰る所も無くし、これからどうやって生きて行けばいいのかさえ分からなくなってしまった少年は、今目の前にいる命を助けてくれたこの男にすがるしかないのだろう。
だからついて行くと、いや、連れて行って欲しいと願い、訴えているのだ。
「あんたは、ヴァンパイアを殺せるんだろ?俺も奴らを……復讐したいんだ。すべてを奪ったあいつに!……今は無理だとしても、いつか必ず」
「あぁ?なんだって?おいくそガキ。てめぇふざけたこと抜かしてんじゃねぇぞ!てめぇみたいなガキがやれると思ってんのか!?そんなにこの世界は甘くねぇ!」
そう叫び、少年は振りほどかれまいと震えた声で必死に抵抗するが、その少年の言葉についに男は激怒し、少年を激しく怒鳴りつけた。
ヴァンパイア、いや人間外の者を相手にするのは、殺すか殺されるかの世界。
そんな世界で、こんな少年が生きて行けるはずも無く、ましてや凶悪なヴァンパイアを倒すなどと甘い考えの少年に我慢出来なくなったのだろう。
その証拠に、少年を鋭く睨みつける瞳には完全なる怒りの炎が揺らめいでいた。
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