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その言葉に、男の眉間にはシワが寄り表情は険しい物になる。
「そりゃ怖いさ。死ぬかもしれない……でも、それでも俺は家族を殺した奴、そして奴らに復讐したい。いつかこの手で。だけどこのまま何もしないなんて嫌だ!だから……お願い……」
その言葉と共に少年の瞳からはとめどなく涙が流れ落ち、唇をカタカタと震わせ、今にも泣き崩れそう体を男にしがみつくような形で必死に支え、震えた声を絞りだした。
「は、はは、はははは!おまえおもしれぇやつだな、気に入ったぜ」
少年の言葉をしっかりと耳に入れ、その姿をじっと見ていた男は再び表情を変え、口元を緩めると同時に突然声を出して笑いだした。
「じゃあ、ついていってもいいの?」
「あん?おまえ俺が何言おうとついてくるんだろ?大体その年で奴らに復讐だなんて、どうかしてるぜ。おら!行くぞ!」
その男の言葉の意味に気づいた少年の顔は自然と明るい物になり、その嬉しそうな顔を見た男の方も気分が良くなったのか、からかいながらついて来いと背中を向け歩きだす。
まぁ、この男にも良心と言う物があったと言う事だ。
「あ、ああ。待ってよ!」
「そういや、おまえ名前は?」
少年は嬉しそうな笑顔を浮かべたまま、男の背中を小走りで追いかけその横に並び、男は少年が自分の横に来たのを横目で確認するとそう聞いた。
「牙」
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