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「こんな所にいたら殺されちまうぞ、ほら。」
そう言うと男は少年に優しく手を差しのべる。
しかし少年は黙ったままその手を掴もうとせず、そればかりか硬直していた体が再び震え出していた。
怯えるかのように小刻みに震えながら青ざめた顔で男を見つめる少年と、手を差し伸べたまま、じっと少年を見つめる男。
2人の間に暫しの沈黙が流れる。
「……だ……」
「あぁ?」
「やだ!嫌だ!」
すると、その重苦しい沈黙を無理矢理破るかのように少年が突然叫びながら立ち上がり、それと同時に勢い良く走り出した。
目の前の見知らぬ存在から逃げるように、全速力で男の横を走り抜けて行く少年。
「鬼ごっこが好きなのか?」
だが、男は追いかけもせずに振り返ると、走って逃げていく少年の背中を見つめそう言い、口元に不気味な笑みを浮かべた。
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