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「大丈夫だ、すぐ終わる。痛みは一瞬だ」
そう静かに言葉を吐き出すと、男の口からは鋭い2本のキバが伸びて来る。
「ちょい血をいただくだけさ」
先程の動きにこの鋭いキバ。そう、この男は人では無かった。
人間の血を主食とし、その血を貪り何年も生き続け、人々を恐怖に陥れる闇の住人ヴァンパイア。
この悲惨な出来事も、このヴァンパイアの仕業だったのだ。
ヴァンパイアはこの鋭く伸びた二本のキバで人の体に噛みつき、そこから溢れ出る血を吸い、腹を満たす。
食事に有りつけるのが余程嬉しいのだろう。
ヴァンパイアは嬉しそうに先程よりめ更に笑みを深め、それとは反対に、少年は男の言葉にさらに恐怖し顔は青ざめ、言葉すら発せられず動く事すらかなわない。
そして、少年は目を閉じて心の中でさけんだ。
大きく、大きく心の中で何度も。死にたくないという一心で。
(死にたくない!誰か助けて!)
ここには誰もいない。
助けてくれる者などいない。
この声が届くはずなど無いとわかっているのに、何度も何度も叫んだ。
助けてを求める声とは裏腹に、少年の心を埋め尽くして行くのは、絶望の2文字。
だが、ヴァンパイアの手が少年の体を掴もうとしたその時。
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