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序章
静かな夜空を丸い満月が照らし、夜空が大地を照らす。
ほのかに照らされたその大地に転がる無数の死体。
アスファルトを染める赤と充満する血の臭い。
側にある幾つかの街灯はへし折れ機能していないが、それを補うに十分な程月の光が雲の切れ間からさしている。
そんな死体の山の中央付近に立っている一人の男。
黒く綺麗なロングヘアーを夜風になびかせ、上下を黒で身を包み黒いマントをはおっており、全身黒ずくめの格好とは反対に色白なその肌と整った顔立ちは美男子と言えるだろう。
「な、なぁ、あんた、な、何でこんな事するんだ?同じ仲間、同族じゃないか……頼む、許して、た、助けてくれ」
夜風だけが通り過ぎて行く静寂を破ったのは、転がる死体の中から唯一一人、血だらけになりながら苦しそうに上半身だけを起こし、かなり脅えた様子で訴えかける男の声だった。
「同じ仲間?同族?」
その言葉を聞き、訴えかける男の方へと体を向ける黒ずくめの男。
そしてしばらく間を置くと、男の前にしゃがみ込みその肩に優しく手を置いた。
「こんなに怯えて……助けて欲しいのですか?いいですよ。助けてあげましょう」
「ほ、本当か?」
黒ずくめの男の言葉に、ひどく脅え暗く沈んでいた男の顔は明るくなり安堵の表情を浮かべるが、それもほんの一瞬。
すぐにその顔に陰が落ちる事になる。
「ええ、いいですよ。助けてあげましょう。その苦しみからね」
その言葉の直後、何かを突き刺す鈍い音と共に、血だらけの腕が脅える男の体を貫いた。
そしてすぐに腕を抜き何事も無かったように立ち上がり、冷めた目で事切れた男を見下ろすその赤い瞳には殺意と憎悪の二文字が満ち溢れていた。
―許す?そんなわけないでしょう。私の復讐は、お前達全員の息のねを止めるまで終わらないのだから―
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