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節子に対するそれは、明らかにぼくからの当てつけだった。
ほんとうは節子が、ぼくのようになっても、おかしくなんかない筈なのに、
ぼくは節子が許せなかった。理由はよくわからないけれど、許せなかった。節子の優しさがぼくに向くたびに、ぼくの怒りはどうにもならないくらいに膨れ上がった。惨めで、ばかだと、罵りたくてたまらなかった。
節子は悪くなんかない。死んだヒナでさえ、なにも悪くないのだ。
だけど、どうしても、
どうにもならなくて、
ぼくは、ぼくの思考を、あのときのあめ玉の缶のなかに放り込んで、
きつく、きつくフタを閉めていた。
「そんなの、言い訳に、なるよなあ」
節子が久しぶりのバイトに出かけたとき、ぼくは久しぶりに、自力で起き上がっていた。
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