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「てゆーか…
あなた『銀狼』でしょ?」
唐突にサツキが話を切り出す。
ロウは空に煙草の煙を吐いてからサツキに問い返す。
「その…なんなんだ『ぎんろう』って。
さっきも駆け寄ってきた女たちが言ってたんだが…。」
「なにってあなたの通り名じゃん。
銀色の髪をした流浪人。
ギター片手に行く村々で唄を披露しすぐに立ち去っていく…。」
「なんだそりゃ?」
ロウはまた煙草の煙を吐く。
靴の裏で火を消し,携帯の灰皿の中に入れる。
「もしかして知らなかった?
けっこー有名らしいんだけど?」
サツキはつんと顔を背けながら嫌味たらしく言う。
「知るも何もおれはそんな通り名名乗った覚えはねえし。」
なんでひとりで旅をするのに通り名が必要なのか理解できない。
そもそもギター片手に行く村々で唄を披露してすぐに立ち去っていくことがそんなに珍しいことなのか。
てゆーか誰だ,『銀狼』なんて名前付けたのは。
ロウの頭には次々と腑に落ちないことばかり流れ込んでくる。
「それとね,何かいい男らしいんだよね。
ウ・ワ・サ・で・は。」
そっぽ向いたままサツキが嫌味ったらしさ倍増で言葉を付けたす。
「…そりゃ光栄ですなァ。」
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