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ロウの口元は緩んではいたが心なしか眉が吊りあがっているように見える。
目の前にいるこの小生意気な娘になにやらペースを掴まれている気がする。
「お前は何者なんだよ?」
「自分から名乗るのが礼儀ではないのかね?」
ああそうか。
この辺りなぜか素直なロウだった。
「おれはロウ。
ロウ・クラウディだ。」
「あたしはサツキ・シェンナ。
サツキでいいよ。」
サツキがロウの目を見て話したのはこれが初めてだった。
よく見たら別に嫌味な顔はしていないようだ。
「それでだなサツキ,唄って喉が渇いたおれに酒を一杯ご馳走してやってくれないか。」
「は?
なんであたしがおごんなきゃいけないの?」
またそっぽを向いて舌を出してサツキはロウのいきなりのたかり行動を拒否した。
「だってさぁ…。」地面からギターケースを持ち上げ背負いながら,ロウはサツキの頭をポンと叩いた。
「何だよぉ?」
深く被った帽子の中から少女の目がこちらに向く。
「人様の財布盗っちゃいけないよな。
なァ,女シーフ君?」
「へ?」
自分の事を棚に上げたロウの鋭い一撃。
効果は抜群だ。
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