銀狼と皐月

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世界には『ギルド』と言うものが存在する。 それはひとつの集合体。 それは『会社』のような企業だったり,同じ目的を持つ者同士のグループだったり。 『商人ギルド』と言うだけでも何百という数のギルドが存在していたりする。 この世界の繁栄に大きな影響を与えており,ギルドなくして世界は成り立たないとまで言われている。 しかし,今この酒場には事もあろうか二人もギルドに所属していない輩がいる。 「あーうめえ。」 ブスっとふくれて隣りでジュースを飲んでいる少女を見て,ロウはわざとらしく言った。 「ゆっとくけど一杯だけだかんねっ。 あたしだって苦しいんだから。」 「さっき大金を手にしたばかりの奴がよく言うぜ。」 ロウは構わず主人に二杯目を頼みグラスについでもらう。 「いつもこうとは限らないじゃん。 昨日なんか村の外で財布落としちゃって野宿したんだから。」 ―あれ? ロウは昨日拾った財布の元持ち主が今わかった。 どうやら元持ち主は自分に変わって野宿してくれたようだ。 悪い事をした。 二秒だけそう思ってみたが,どうせ人から盗ったもんだろうとすぐに感情は入れ替わった。
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