銀狼と皐月

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「年頃の女の子が夜の空き地で,しかも独りで野宿なんて危険極まりないだろがっ。 アタシの財布ネコババした奴,見つけ次第盗み返すっ!」 サツキはグッと拳をつくった後半分以上残っていたジュースを一気に飲み干した。 「まァ,がんばれ。」 すでに見つかっていたがロウは気にせず酒を飲む。 「それにしてもあたしがシーフってよくわかったね。しかも唄いながら。 盗みの速さと正確さには自信あったのにな。」 軽く尊敬の眼差しでサツキはロウを見た。 いろいろしゃくにさわる奴だが,その目は侮れない。 「んじゃあ逆に言うが,よく今までバレなかったな。 バレたらどうなるかわかってんのか? 女は捕まるだけじゃ済まねえんだぞ?」 「わかってるよ。」 何がおもしろいのかサツキは笑顔だった。 今は帽子をとっているから余計わかった。 その笑顔はまだ大人と言うには幼さが残りすぎている。 「心配してくれるんだ?」 サツキはロウの顔を除き込んで何か困らせるように,おちょくるように言った。 「笑い事じゃねえだろ。」 ロウは目を反らして二杯目の酒を飲み干す。
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