銀狼と皐月

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「よォ。旅の人かい? どうだい?よかったら今夜はウチの宿で…」 村の入り口で宿屋の男に声をかけられたが相手をする気はない。 もちろん野宿よりは宿をとってベッドで寝る方が万倍ましだとは思う。 しかし今は空腹ゆえ,村の酒場を探すこと以外頭が回らないのだ。 酒場に着いたのは何件かの宿の勧誘にあった後だった。 「この村の規模に対して宿屋の数が合わなくないか?」 「ははっ。この村にはアンタの様な旅人が多くてね,いつの間にか宿屋だけが増えちまったのさ。 これがこの村の自慢でもあるがね。」 「まぁ…,いろんな村があるからな。」 酒場のカウンターで料理をたいらげた後,安酒を飲みながらロウは店の主人と会話を交わしていた。 もう太陽は姿を消し,空は青から黒に変わっていた。 店の中は仕事が終わって酒を楽しみにきた男たちで溢れていた。
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