銀狼と皐月

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海の近くを歩いていると髪がベタついたり,わけのわからない虫を踏みそうになったりする。 だからと言って海は嫌いではない。 むしろ好きなくらい。 今まで何人が言ったセリフかわからないが,海を見ていると,波の音を聴いていると,心が洗われる。 それは,海が全ての生き物の母親だからだと言う人もいる。 日が昇る前に目を覚ましたロウは朝の港を歩いていた。 港では海から上がった魚を並べて朝市が行われている。 ロウは買う気にはならないが見ているだけと言うのは割と好きだった。 「宿に戻って飯でも食うか。」 魚の切り身がジュウジュウ焼かれているのを見てロウは宿に戻った。 朝飯を食べて宿を出たロウは村の広場に来ていた。 場所を選んで,そして背中の大きなギターケースから黒いアコースティックギターを取り出す。 ―自分の中での決まり事 ジャーンと軽く何回かギターを鳴らす。 ギターを持った青年が目に入ると歩いていた足が自然に止まる人も現れた。 もの珍しそうに人々が集まってくる。 それを見てロウは軽く口元を緩めそして,声を発した。
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