銀狼と皐月

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「なんだろ… なにかあったのかな?」 広場にできている人だかりを見てサツキは足を止める。 人々の顔色を見る限りでは事件ではないらしい。 徐々に近づいて行くと何やら声が聞こえる。 歌声。 良く聞こえる場所まで来たがこれ以上は人の壁で前に進めない。 「もうっ。 ちょっと通してー。 …と,待てよ?」 ニヤっと良からぬ顔をしてサツキは人の壁をかき分けて行く。 サツキ・シェンナ。 職を持たない旅人。 …兼,シーフ。 いわゆる泥棒だ。 髪は栗色のショート。その上に茶色の帽子を被っている。 服はノースリーブ,ズボンは肩の紐を外したオーバーオール。 ボーイッシュな服装は動きやすい上に頑丈だ。 背は決して高くないが,その分身の軽さには自信があった。 ちなみに… 昨夜空き地で泣きべそをかいてふて寝した張本人である。
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