銀狼と皐月

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「お嬢さん,ライブはもう終わりましたよ。」 ロウは瞬きもせず硬直している少女を起こすように声をかける。 「―あ。」 サツキは我に返ったように目を大きくした後周りを見渡した。 すでに人だかりはなくなっていたがまだ広場には人がたくさん残っている。 「お。動いた動いた。」 ようやくサツキは青年の存在に気がついた。 「そりゃあ動くさ,人間だもん。」目を合わさずにサラッと言う。 「んじゃついさっきまではなんだったんだ?」 ロウは煙草を口に加え,マッチをする。 珍しくその顔は笑顔と呼べるものになっていた。 サツキはムッと青年を見上げる。 「さっきも人間っ!」 「おれの唄に我を忘れた…か?」 図星だった。 青年の歌声がかっこよかったとかはわからない。 ギターなんて見たことすらなかったから余計わからない。 しかし,目の前の銀髪の男の『唄』には人を惹き付ける何かがある…様な気がする。 サツキが誰かの唄を聴いて我を忘れたなんてもちろん初めての経験だった。 …が。 「んなわけないでしょお。 まぁ…上手だったのは認めるけど。」 「素直じゃねえなぁ。」
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