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――がちゃ。
着替えを終えて、勇は更衣室から出てきた。
出てすぐに、道場を軽く見回すと、はじっこで愛が子供に囲まれている。
愛『突きってのは、力を入れちゃダメだよ。力んじゃうと勢いが無くなっちゃうから。』
『どーして?』
愛『ん―。…分かんない。
とにかく手ぇ、ギューッて握ったらダメ。
軽く緩く握るの。そうすれば、早い突きが出せるよ。』
『がんばる~!』
子供たちは張り切って、突きを練習し始めた。
愛『あ、ほら。りかちゃん。
そんな力んじゃダメだって。』
子供の横に座り、小さい手を包む 愛。
その顔には優しげな微笑み。
勇「……俺にもあんな微笑みを向けてくれ。」
ポツリと呟く。
愛『そ―!うまいうまい!!』
『きゃーぃ♪やったぁ!愛ちゃんに褒められちゃった!』
『いいなぁ…』
愛の笑顔を後目に、ケータイをパカッと開き、着信を見る。
勇「……帰ろ。」
首の後ろに手を当て、ふぅっとため息をつきながら靴を履きに玄関へ。
愛『勇!』
後ろから愛の声。
勇は後ろに振り返った。
愛『気をつけてね。また明日。』
笑顔ではないが、しっかり見送りで手を振ってくれてる。
勇「……おう。じゃあな。」
靴を履き、愛に小さく笑みを向け、玄関を出た。
帰り道。
勇「…ああいう所は本当、イイよな…」
独り言を呟きながら、すぐそこにある自分の家に到着。
これが、あまり変わらない愛らぶ勇コンビの日常。
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