●彼女●

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      「あれ!?…矢島先輩!?」     パンコーナーを眺めていると、後ろから呼ばれた。       愛『…はい?』     振り返れば、後輩の男子。       「あ、やっぱり!俺のコト…覚えてないっスか…?」       爽やかそうな後輩はカリカリと頬をかきながら、愛に笑いかけた。     愛『えー…と…、体育祭の時、保健室で…?』       そう言うと、さらに明るい顔をする男子。     「覚えてくれてた!!よかったぁ…。あのとき名前、言い忘れたけど…浅野 大輝【アサノ タイキ】っス!」     今度は爽やかに目を細めて笑った。       愛『……、』       この浅野君とは体育祭のとき、保健室で会った。     競技中にすり傷を作った愛が保健室に行くと、数人の後輩男子が溜まっていて、   そこで、初対面なのになぜか話し始めてしまい、そのまま数分を過ごしてしまった。   その中に浅野君がいた…はず。       大輝「先輩も昼飯用の買い物ですか?」     大輝は愛の横に並び、パンを見始める…。       愛『うん。今日お弁当持ってくるの面倒で。浅野君はいつもコンビニで買ってるの?』     大輝「あは、名前で呼んでいいっすよ。てか呼んでいただきたいです!」          愛『ぇと…大輝君』     ぎこちなく言うと、大輝はまた爽やかに笑った。     大輝「いつもって訳じゃないけど、ときどき!」     愛『へぇ~。じゃあ今日がその“ときどき”なんだ』     大輝「はい!てか、そろそろ行かないと遅刻じゃないっすか?」     愛『え!早く買ってかなきゃ!!』     大輝「俺も…」     と、焼きそばパンに手を伸ばすと、横からちがう手が…。     愛『あ、』     …なにこの、お決まり…     大輝「あ、先輩も焼きそばパン?」     同じモノをとろうとしてしまい、手を引っ込める2人。     大輝「…先輩どうぞ!俺、コロッケパンでいいから!」     愛『え、でも…』     大輝「迷ってないで、ほら!」     無理にパンを持たされてしまい、困ったように大輝を見上げる。     やっぱり大輝の顔は爽やかに笑っていた。         愛『…ありがとう』       小さく笑い、お礼を言うと、大輝は少し頬を赤くして、照れたように目を細めながら笑う。     …勇とは大違いだな。  
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