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「あれ!?…矢島先輩!?」
パンコーナーを眺めていると、後ろから呼ばれた。
愛『…はい?』
振り返れば、後輩の男子。
「あ、やっぱり!俺のコト…覚えてないっスか…?」
爽やかそうな後輩はカリカリと頬をかきながら、愛に笑いかけた。
愛『えー…と…、体育祭の時、保健室で…?』
そう言うと、さらに明るい顔をする男子。
「覚えてくれてた!!よかったぁ…。あのとき名前、言い忘れたけど…浅野 大輝【アサノ タイキ】っス!」
今度は爽やかに目を細めて笑った。
愛『……、』
この浅野君とは体育祭のとき、保健室で会った。
競技中にすり傷を作った愛が保健室に行くと、数人の後輩男子が溜まっていて、
そこで、初対面なのになぜか話し始めてしまい、そのまま数分を過ごしてしまった。
その中に浅野君がいた…はず。
大輝「先輩も昼飯用の買い物ですか?」
大輝は愛の横に並び、パンを見始める…。
愛『うん。今日お弁当持ってくるの面倒で。浅野君はいつもコンビニで買ってるの?』
大輝「あは、名前で呼んでいいっすよ。てか呼んでいただきたいです!」
愛『ぇと…大輝君』
ぎこちなく言うと、大輝はまた爽やかに笑った。
大輝「いつもって訳じゃないけど、ときどき!」
愛『へぇ~。じゃあ今日がその“ときどき”なんだ』
大輝「はい!てか、そろそろ行かないと遅刻じゃないっすか?」
愛『え!早く買ってかなきゃ!!』
大輝「俺も…」
と、焼きそばパンに手を伸ばすと、横からちがう手が…。
愛『あ、』
…なにこの、お決まり…
大輝「あ、先輩も焼きそばパン?」
同じモノをとろうとしてしまい、手を引っ込める2人。
大輝「…先輩どうぞ!俺、コロッケパンでいいから!」
愛『え、でも…』
大輝「迷ってないで、ほら!」
無理にパンを持たされてしまい、困ったように大輝を見上げる。
やっぱり大輝の顔は爽やかに笑っていた。
愛『…ありがとう』
小さく笑い、お礼を言うと、大輝は少し頬を赤くして、照れたように目を細めながら笑う。
…勇とは大違いだな。
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