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神城中学の校庭。広々とした静けさが漂う、その校庭には二人の影があった。
二人は朝早くから学校へ登校。そのまま教室へ直行して勉強に取り掛かる訳でもなく、校庭脇にある体育用具が入った倉庫からサッカーボールを拝借し、蹴り合っていた。管理体制が甘いのか、その鍵は大体が掛かっていない。
「うわっ!」
そしてサッカーをしている途中、一方の人の顔面へボールが飛んでいった。かわすことも出来ない速度、彼は目をつぶり、衝撃を予感した。
「…………あれ?」
しかし、いくら待ってもボールは顔には来ない。目を開けると目の前が真っ暗になっていた。
サッカーボールが少年の目の前、もう後1ミリで当たるという所で止まっていたのである。
少年が後ろに尻餅をつけると糸が切れたようにボールも落ちた。
「おーい、大丈夫かぁ? 純也」
尻餅をついた少年の名前は純也(ジュンヤ)という名で、肩に若干届かないほどの黒色の髪型だった。
もう一方の少年が声をかけて来た。さっきボールが飛んで来たのは彼が蹴りすぎたせいだ。
「晶……あ、ぁあ、大丈夫」
「ほらっ」
こちらは純也とは違い鈍い金髪で髪が長く、前髪は髪留めで分けているが目は隠れる程長い。後ろ髪は肩を裕に越している。そんな晶(アキラ)という名の少年が手を伸ばした。純也は呆然としたままその手を握って立った。
「……」
「どした?あまりの驚きにまだ声が出ないのか?」
「い、いや。別に…」
純也はそう言うと、ボールに目をやった。ボールはただそこに落ちているだけである。
「早くいくぞ。勝手にサッカーボールを盗ったってばれたら先生になんて言われるか……」
そろそろ、先生らも学校へと来る時間になっていた。その前にボールは直さないといけない。
「わかってるって」
純也はサッカーボールを拾った。やはりどこにもおかしいところはない。
「何であそこで止まったんだ? 俺の顔に当たらなかったんだ?」
純也は呟いた。
「ん? どした?」
「い、いや。なんでもない。とにかく、早くボールを戻して教室に行こう」
晶は怪訝な顔を浮かべたが、まぁそうだな。と思い。
「ああ」
とだけ言った。そして二人は教室に行った。
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