思い出は胸の中

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僕らのルール。 最初は挨拶をする。 出来れば、気の利いた受け答えがいい。 互いの言葉に、行動に、探るような真似はしない。 話し掛けられたら、答える。 帰る時に、挨拶はしない。 話し合った訳でも無いのに、出来上がった暗黙の了解。 それなのに。 何かが弾けたように、頭の中から疑問が溢れだす。 君は誰?名前は?学年は? 何でいつもいるの。 何で泣いているの。 何でキスしているの。 君にとって、僕は何? 体が、甘く疼く。 頭は真っ白になって…… 気付いたら、僕は彼女を抱き締めていた。 触れ合う唇は…… やがて熱を帯び、激しさを増す。 彼女の口から、小さな呻き声が漏れ……僕は愕然と自分の手を、見つめた。 彼女の、胸の上に… 置かれた、手。 知らない。 僕はこんな自分を、知らない。 恐かった。 自分の中にいた、獣の部分が… 恐かった。
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