思い出は胸の中

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「科学の先生がさ。また、頭が薄くなったんだよ。今日はスライドを見ながらプリントを埋めるだけだったけど…反射して網膜に光が焼き付いた」 すらすらと馬鹿げた事を言う僕。彼女はくすくす笑った。 「そう。遠くの景色を見つめるのは、目にいいんだったよね。前にそのネタ、言わなかったっけ?」 「前は……担任のおしろいが白すぎて、だよ」 ふうんと頷くと、小さく椅子をひく音がした。 いつも会話。いつもの行動。 これから、一時間くらい。 奇妙な時間が続く。 僕は何をする訳でも無く、空を見上げるだけだし、彼女は気紛れに話し掛ける以外は、ずっと本を読んでいる。 僕は自分が見ていた風景の中で『今日一番の景色』を見つけると、満足して帰路につく。  そんな理由のタイミングだから。僕が先に教室を出る日もあれば彼女が先にいなくなる日もある。  彼女の帰るきっかけは、わからない。きっと僕と同じようなルールが、自分の中にあるのだろう。
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