20人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「科学の先生がさ。また、頭が薄くなったんだよ。今日はスライドを見ながらプリントを埋めるだけだったけど…反射して網膜に光が焼き付いた」
すらすらと馬鹿げた事を言う僕。彼女はくすくす笑った。
「そう。遠くの景色を見つめるのは、目にいいんだったよね。前にそのネタ、言わなかったっけ?」
「前は……担任のおしろいが白すぎて、だよ」
ふうんと頷くと、小さく椅子をひく音がした。
いつも会話。いつもの行動。
これから、一時間くらい。
奇妙な時間が続く。
僕は何をする訳でも無く、空を見上げるだけだし、彼女は気紛れに話し掛ける以外は、ずっと本を読んでいる。
僕は自分が見ていた風景の中で『今日一番の景色』を見つけると、満足して帰路につく。
そんな理由のタイミングだから。僕が先に教室を出る日もあれば彼女が先にいなくなる日もある。
彼女の帰るきっかけは、わからない。きっと僕と同じようなルールが、自分の中にあるのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!