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初めて会った時、彼女は僕を不振そうに見つめた。
でも、会話は無い。
今のように椅子に座って黙々と本を読み終えると、帰る。
そんな事が三日続いて。
僕も疑問を抱きながら、それを口にする事は無かった。
四日目の放課後。
とうとう彼女は、空を眺める僕に声をかける。
「なんで、空を見上げているの」
「友達と小テストの点を競い合って負けたんだ。だから罰ゲームだよ」
僕はそう答えた。
その日から、毎日聞かれる事になる。だから理由も毎日変わった。
「大事な物を、風にさらわれてしまったから。まだ空を流れているかも知れない。今、探している途中だよ」
「猫を拾ったんだ。帰るまでに名前を決めたいけど、なかなか決まらなくて考えているんだ」
いつの間にか彼女の問い掛けを楽しみにする自分がいた。
彼女もまた、理由を追求するような野暮はしない。
気付けば、それが僕達の挨拶になっていった。
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