ラドン

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知恵による勝利 さて、ヘスペリスの黄金の林檎を守る番人とされたラドンであるが、100の頭を持つ以外、具体的な描写が少ない怪物である。 神話を代表するヘラクレスの12の功業11番目の試練が、へスペリスの林檎を手に入れることである。 しかし、力だけでなく知においても優秀なヘラクレスは、頭を使って林檎を手に入れる。 彼はヘスペリスへ向かう途中、人間に火をもたらした罪で岩に繋がれているプロメテウスを助け、その礼に林檎を奪うなら自分で行かずにアトラスに力を借りるよう助言を受けていたのだ。 ヘラクレスは最果ての国で天空を支えていた、アトラスに林檎を手に入れるよう頼む、アトラスは取ってくる代わりに天空を取ってくるまで支えてほしいといった。 ヘラクレスはアトラスの願いを聞き入れ一人で天空を担ぎあげる。そしてアトラスが帰ってくるまで支え続けた。 しかし彼はアトラスの企みを知っていた、アトラスが自分の代わりに永久にこの仕事をやらせるつもりだという事を。 アトラスは、ヘラクレスの頼みどおり、黄金の林檎を3つもぎとって帰ってきた。アトラスがどうやってラドンの守る木から実をもぎ取ったかは、残念ながらわからない。 決して眠らないラドンも、アトラスには眠らせることも出来たのか、アトラスはラドンより強かったのか。 だが、少なくともラドンがその姿を表さないことから、ヒュドラを葬ったヘラクレスでさえも自分ではなくアトラスに頼まざるえないほど恐ろしさを持っている印象を強くつけられる。 ともあれ、林檎を取ってきたアトラスは、自分はもう天空を支えるのは嫌だといって、黄金の林檎を投げ捨て、立ち去ろうとした。 ヘラクレスはこれを予想していて、こう言った。 「あなたの代わりに支えるのは良いが、私はあなたほど頑丈ではないので潰れるかもしれない、そこで潰れないようにわらの束を頭に乗せ支えにしたいのだが、その間だけ天空を支えといてくれないか?」 迂闊にもアトラスはこれを承諾してしまう。 こうして、アトラスは自分で企てた罠に自ら陥ることとなり、ヘラクレスは黄金の林檎を拾って、ヘスペリスを去ったのである。
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