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火を噴く怪物
テュポンと神々が戦う神話はほとんどない。それは、英雄達が活躍するギリシャ神話の時代において、テュポンはすでに過去の怪物で、その恐ろしさ、悪業はすでに過ぎた時代の出来事とされているためである。
数々の怪物がテュポンの子供といわれるのも、テュポン自身がすでに物語に登場してないことを証明しているのだ。
実際テュポンが神々と戦ったと語る伝承は、神々の王ゼウスとの一戦だけである。
恐るべき力を身につけたテュポンは、神々の支配に抵抗し、ゼウスに戦いを挑む。立ち向かった神の多くは蹴散らされ、姿を変えてエジプトへと逃げるしかなかったという。確かに100もの手がそれぞれ巨大なドラゴンでは、神々もたやすく勝利することが出来ないであろう。
だがその時ゼウスが、すさまじい雷を一撃でこの怪物をシチリア島の大地に落とし、その上に大きな岩を乗せ動けなくした。
その岩こそ、シチリアにあるエトナ火山であり、その火口から今もなお、下敷きになったテュポンが熱い吐息を吐いているのだ。
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