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どしゃ降りは昼を過ぎても止まなかった。バイトも今日は休み。借金の返済にあてられるはずのお金はまるまる浮いた。行くあてもなく、とりあえず病院に行くことにした。
産婦人科の受付を通りおばさん連中の中にカオリはいた。
「オッス」
「オッス」
ハモるように挨拶。周りのおばさん連中はクスクスと笑い、視線が痛い。少しゆっくり話せる場所に行くことにした。
「予定日が来週の金曜なんだって」
お腹を撫でながら笑って言った。
「バイト大丈夫?休めそう?」
「多分大丈夫。社長とかに相談するから」
無理そうならサボるけど。
「実感わかないね」
「そうだな。赤ちゃん生まれるなんて想像しなかったし」
「後さぁ、その……。結婚とか…さ」
照れながら笑う。そう言えばそうだった。俺達、結婚するんだった。結婚するまで生きれると思ってなかった。
「…って俺達、婚約指輪買ってないじゃん」
「あ…」
どこまでもヌケてる二人だった。
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