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本宅の側にある 古い土蔵の中に入ると、暫く誰も使っていないのか、酷くよどんだ空気と大量の埃にむせ返る
「一番奥にあるガラス張りのがそうだよ」
孝志の親父さんは骨董品の収集が好きで見た時もないような品があちこちにあったが、言われたようにそれはそこにあった
「これかぁ…細かい細工なんだな」
一見玩具のように見えるそれは今で言うリカちゃんハウスのようなもので家具や本棚、台所に至るまで細かく作られてあった
「年代物だしこれって高いの?」
なんとなく聞いてみる
「高い物だと5000万くらいするって聞いたなぁ」
「これがそんなにするのか?」
後になって分かる事だがドールズ・ハウスとはフランスの貴族が子供に生活用具の用途を教える為の玩具なのだという。とあるフランス貴族は職人に制作を頼んだのだが余りの多大な価格に途中で諦めたとされる。
その頃でさえ一般人の年収の五倍、今は骨董の価値と現存する数の少なさから価格はあってないようなものだという
「へー…これがねぇ…」
じっと見ている俺を孝志は満足そうに見ている
その時、不意に足元にネズミが通り過ぎた
「お!!」
驚いて体制を立て直す暇もなくドールズ・ハウスにぶつかって倒れこむ
「…大丈夫かよ?」
「あぁ…びっくりしたよ」
情けないと思いながらフラフラと立ち上がりドールズ・ハウスに目をやる
「あれ?見てみろよ孝志」
倒れてぶつかったガラスの台座の一部にポッカリと空洞が出来ていた
「あ!壊したのか?やばいなぁ…親父にぶん殴られちまう」
半分泣きそうな孝志だったがなんとか直せないかとその空洞に手を入れてゴソゴソやっている
手伝おうとした時、ガタっと変な音が聞こえた。
「なんだ?今の音?」
すると孝志は片手にヨレヨレで埃だらけの本をこっちに見せた。
「なんだそれ?」
「聞かれても分からん、穴ん中いじくってたらこの本が出てきたんだよ」
本の中身は変てこな文字で解読が出来ない
「日本語じゃないよな?なんだろこれ?」
結論は出ないまま、とりあえず本は大事に取っておき、台座にはシートを被せて簡単には見付からないように隠し、こそこそと逃げるように土蔵から退出した。
そしてこれが俺達と自動人形「オート・マター」との出会いだった。
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