覚醒

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「そうですか…一体誰なんだろう?こんな設計図を書いたのは」 価値の分からぬ物、しかも偽物と聞いて興味が薄れてしまった。 先生は熱心にその設計図を見て 「泉ひとみ」 ポツリと呟いた。 「泉ひとみ?女性ですか?」 「うん、恐らくは泉目吉の愛弟子の泉ひとみだろうね」 また自分の世界に入っている。 「健太郎先生…分かりやすくお願いしますってば!」 「そんなに怒鳴るなよ…泉目吉とは江戸の頃とても有名な細工師だったんだ、今のお化け屋敷の原型を作った人間でもある。グロテスクな人形やトタン返しなど数多くの細工を制作したんだ。そして泉ひとみは数少ない愛弟子の内の一人、人形の細工が得意で師匠である目吉も驚くほどの技術を持っていたんだ。」 難しい話が嫌いな孝志がおおあくびをしている。 「その人がこれを書いたんですか?」 「うん、泉ひとみが作る人形は特殊な物でね。生き人形と呼ばれていた物なんだ」 「生き人形?」 「そう、昔の歴史書にこうある」 …泉ひとみの作る人形は、ただの人形なら各も騒ぎにはならず。その人形が人間のの生き写しかと見間違うほどの出来栄えだったので興行は大いに盛り上がり木戸銭が乱れ飛んだのだ… 「これが生き人形と呼ばれる由縁だね、本物の人間と見間違うとは大袈裟に書かれているのかも知れないが。つまりそれだけ他人の人形より写実主義だったって事だ」 「そうなんだ」 まったく興味がないのか孝志が空返事をする。 片方の眉を挙げながら苦笑した先生はそれでも説明を続けて 「設計図に読み取り辛いが、生き人形と言う文字が入っている。だから、泉ひとみ本人、もしくはひとみに関係ある人物がこれを書いたと言う訳だよ」 確かに理屈はそうだろう…ただ孝志の家のドールズ・ハウスに何故これが入っていたのかと言う謎が残る。 「それは分からない、それよりも気になる事があるんだよ…図に血管に見立てた管、血液、小動物の内蔵、これが一番問題なんだけど…心臓に当たる部分の機械…もしかするとこれはオート・マターに使われていた失われた技術なのかも知れない」
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