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土蔵の中は昨日開け放したせいか空気のよどみは薄くなっていた。
「真ん中辺りにあるだろ?」
確かにあの設計図とうりふたつの人形が置いてある。
「生き人形か…確かにリアルな人形だな」
他の人形とは比べ物にならないぐらい細かい造型の人形である。
髪の毛から鼻孔など人間そっくりでこの人形を作った人物の異才な技量がよくわかる。
ふと…ある事を思いついた。
「これが生き人形で、オート・マターを使っているんなら勝手に動くんじゃないのか?」
「確かにそうだよな…ヤッパリ違うのかな」
がっかりしたように孝志が言う。
俺は取り合わず。
「とりあえず、この人形を調べてみよう、ただ壊れてるかもしれないだろ?結論はそれからだ」
そうだ、そうしようという事になり二人がかりでガラスのケースを外した。
しかし手に取った人形は軽くそして冷たかった。
「体温なんてないし、設計図のように複雑な仕組みのカラクリならこんなに軽くないよな…」
「やっぱりあの設計図の人形じゃないか…」
「そうだろうな」
諦めきれない様子の孝志だったが、人形を軽く撫でると近くのイスの上に置いた。
「まぁ、そんなもんだよな。腹も減ったし、家でなんか食べて行くか?」
日も暮れていたので孝志の誘いを丁重に断り、帰る事にした。
遅くに帰宅したので両親から軽い小言を言われうんざりしたが、疲れていたせいか、ベッドに潜り込むとあっという間に眠りについた。
………突然携帯が鳴り響き気持の良い眠りから強制的に起こされる、時間を見ると夜中の二時。
「誰だよ……」
半分寝ぼけながら電話にでる。
「雄太か?大変なんだよ!!人形が消えたんだ!!!」
「あっそう………………えっ!!?」
眠気が一気に飛び、身体中に鳥肌が立つ。
「どういう事だ?」
興奮する孝志をようやくなだめ話を聞きだす。
「親父にいじったのを見付かる前に人形を元に戻しに土蔵に行ったんだよ。そしたら椅子の上にあの人形置いたはずなんだけど、何処にもないんだよ」
「そんな…あれが…オートマターだったのか?」
二人とも後は声にならなかった。
現実にオートマターは存在し、そしてそれは動きだしたのだった。
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