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次の日は頭の中がいっぱいでまったく授業にならなかった。 放課後直ぐに健太郎先生の元へ駆けつける。 事の顛末を話すと、また難しい顔をしながら。 「それは、まずい事になったね…」 困惑気味に話だした。 「昨日あれから、あの本を家で調べたんだよ。ほとんどフランス語だし学校にある資料だけじゃ翻訳も出来ないからね、調べて行くうちに信じられない記述が見付かったんだ」 癖なのか今日も回りくどい話方をする、大人しく聞いていると。 「あの人形は確かにオートマターを使った人形である事は間違いない。ただの人形なら問題無いわけだけど、普通の人形とは違うみたいなんだ」 「自分で動くなら普通の人形と違うに決まってるじゃないですか」 「そういう事じゃなくて…オートマターだけなら勝手にうろうろするだけなんだろうけど…あの人形には意識を取り込む働きもあるみたいなんだ。」 「意識?」 「感情って言った方がいいかな、もっと分かりやすく言えば霊的な魂を取り込むんだ、その魂の意識がそのまま人形の意識に反映される」 「そんな事が出来るんですか?」 「実際には分からない、ただ本にこう書いてあったんだ。」 1980年3月6日。 革新的な実験を試みる。 オートマターを原点とし、いかに人間と人形を近付けられるか。 人に秘する行いだったが此処に記す。 オートマターの働きはすでに人間のそれと変わりなく、唯一の欠点は思考能力だけどいう段階までこぎつけた。 これが難解でいかに高度にプログラムしても人間のように自分で考え学習する事が不可能なのだ。 そこで、オートマターに魂の器を組み込み人間の思考をそのままオートマターに移植する事とした。 被験者は死刑囚。 早速実験を試みた。 死刑囚に麻酔をかけ眠らせ、刺殺。 オートマターに魂を移植する。 この実験は失敗に終わった。 魂の移植には成功したのだがまったくオートマターが動かなくなったのだ。 原因は不明。 また一からのやり直しとなる。 「ここまでしか翻訳してないからなんとも言えないけれど、もしかするとその人形が動きだしたとも考えられる」
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