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すると推測でしかないが死刑囚の魂が乗り移った人形がうろついている事になる。
事の次第に気付いたのか孝志も慌てて。
「まずいよな?そいつが人殺しなんかしたらしらんぷりも出来ないだろ?早く見付けなくちゃ」
「見付けると言っても当てがない…とりあえずは急いであの本を全部翻訳しなくちゃな」
そそくさと帰り自宅を始めた先生が。
「どうせ帰っても気を揉むだけだろう?親御さんには私から何か理由を付けて話しておくから私の家に一緒に来たらいい」
願ったりの話だったので孝志と一緒に先生の家にお邪魔する事にした。
「へ~随分いい所に住んでるんだなぁ」
孝志の言う通り、家自体は平凡な二階建てなのだが、海に面したこの家は見晴らしがよく小気味良い雰囲気が漂っていた。
先程から難しい翻訳に取り組んでいる先生には悪いような気がしたが、自分達には何も出来る事が無く、待っている間そんな事を考えていた。
「もっとお菓子食べるかな?」
ニコニコとした笑顔でお菓子を勧めてくるのは健太郎先生の奥さん、なかなかの美人でよくあの変わり者の先生と結婚したもんだなと思うが、名前は美保子さんと言うらしい。
「遠慮なく頂きます。」
孝志はほんとに遠慮をしらない。そんな場合じゃないだろうにと思いつつ、孝志の平常心に救われている部分も多々ある。
やがて疲れた顔をした先生が俺と孝志とを書斎に読んだ。
「どうでしたか?」
待っていた分余計に気になる。
暗い顔をした先生は
「最悪だよ…報告書のようだが…翻訳したから見て見てくれ…」
日常の事も書いてあったのだろう何度も書き直した後がある、クシャクシャになったノートを手渡された。
1980年5月7日
「二体目のオートマターを制作中、作業者の一人が服毒死。原因は極度の精神疾患とされる」
1980年5月29日
「スプリンクラーが作動、周りに火の気は無く誤作動だと考えられる。」
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