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「はい、今日は終わります」
教壇に立つ市ノ瀬が静かに講義の終わりを告げる。
「行こっか、ゆぅ」
「うん」
二人は席を立つ。廊下に出ると市ノ瀬とちょうど出会った。
「お急ぎですか?」
「あ、いえ…」
「講義中ずっと上の空だったみたいだけど?」
「え!?」
(バレてるー!)
柚梨奈は考えごとでいっぱいで、正直授業どころではなかったのだ。
(市ノ瀬先生の講義はいつも集中して聞いてたのにぃ…)
後悔と、見抜かれていたことのショックで軽くヘコんでいると、優しい声がかかる。
「最近はどうだい?なにか変わったことはない?」
瞬間、頭をかすめたいろんなこと。
でも、それを振り切って
「はい、大丈夫です」
と力強く答えた。
他人に相談するのもいい。
だけど、この悩みは自分で解決すること。
自分と隆也で解決することだと思った。
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