名前

5/12
前へ
/591ページ
次へ
「あ~いいよお前返しといて。アキちゃんと連絡取れるだろ」 あの子が店を飛び出した時席に忘れていた傘。 同じ大学の友達に渡せばすぐにあの子の手元に戻っただろう。 しかし、それを俺が返したい!と言って半ば強引に受け取って来た。 「なに言ってんだ。 自分で会う口実作ったくせに」 口実。 その通りだ。親切心なんてまるでない。 あるのはただ会いたいという下心だけ。 「そのつもりだったけど。もういいや。なんか変な女だし。気の迷いだったんだよ」 傘から目を反らし、帰ろうとするのに松尾が追い討ちをかけてる。 「逢って数分で告白したくせに」 「数分!?」 莉乃が驚く。 「だからこそ気の迷いだろ。 ノリだよノリ!」 「逢って数分で大嫌いって言われて落ち込んでんじゃん」 「大嫌い!?」 ヒドイ私の隆也に…というセリフは皆聞き流した。 「一目惚れだったんじゃねぇの?」  
/591ページ

最初のコメントを投稿しよう!

699392人が本棚に入れています
本棚に追加