山賊の話

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 ネパールの山には山賊がしばしば出没する。私が山に入る前日もドイツ人医師が首のないまま川に流されていた、との話を聞いた。  旅行者を襲った所で、わずかな金しか持っていないだろう、と考えるのは、日本人の感覚であるらしい。ネパールは公務員の平均月収が2000円位の国。ホテルも一泊、2ドルくらいからある。日本の約100から200分の1の経済力だ。さて現地人から外国人がどう映るのかを考えてみよう。自分より200倍を稼ぐ人。日本で言えば、月収6000万円位の金持ちだ。貧乏な私でさえ彼らには大金持ちに映るだろう。実際、海外旅行するなら帰りの航空券を現地で買える位の金はポケットに入っているものだ。私も薄い給料袋を持って日本を出たので、20万円位は持っていた。  さて、4000万円の現金をポケットに入れている人間が目の前にいる。相手がどんなに叫んでも誰にも聞こえない。山道を通る人間はほとんどいない。助けを呼びに行こうにも、歩いて3時間。往復6時間はかかる。追いかけて来るにも、相手は徒歩だ。ましてや殺してしまえば、証拠も残らない。  さて、あなたが本当にお金に困ったいたら、何を考えますか?
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