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一瞬にして、瞳を奪われた経験をお持ちだろうか。
タイ、バンコクから「戦場に掛ける橋」で有名なチャンタナブリに向かう列車の中の出来事だ。
私が座っている座席のはす向かいに座っていた一団の中にその子はいた。
細いその体に、少しウェーブのきいた黒く長い髪。ぱっちりとした瞳と少し厚い艶やかな唇。
私の人生の中であんなに美しい人を見たことがない。
ふと目が止まると、もう釘付けである。
「美しい…。」
ただ、ただ、彼女に見とれるばかり。
すると、その集団の中の1人。60歳位の貫禄のある男性が、立ち上がると、私の目の前の席に、どっと座った。
「君、日本人だろう。」
日本語だった。
「私、カメラマンでね。タイの女性が独り旅をするってテーマで写真を撮りに行くんだ。これからどこ行くの?」
「チャンタナブリへ」
「お、一緒じゃないか。戦場に掛ける橋の線路をバックに写真撮りに行くんだよ。一緒に来ないか?」
私が見とれていた女性はJさん。彼の連れてきたスタッフの1人だった。
モデルの女の子より、よほど綺麗な人だった。
なんと、私はカメラマンの撮影についていくことになったのだ。
Jさんは近くで見ても、やはり美しい…。
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