恋の話

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 撮影のスタッフの人達と一緒に昼食をとる事になり、川辺の高級レストランに入った。  川の流れを見ながら、さながら水上レストランのような素敵なレストランだ。  席に着くと、ウェイターさんがお皿とナイフ、フォークを持って来てくれる。私の前に置かれたその皿を、向かいに座っていたJさんがそっと取り上げた。  なぜかな? と、不思議に思っう私。 Jさんはにっこりと照れ笑いを浮かべながら、私の皿をペーパーナプキンで丁寧に拭いた後、私の前に置いた。  清潔好きなタイ人達の間では当然の行為らしいが、私はとても驚いてしまった。  恐縮して遠慮しようとする私を、Jさんはさわやかな笑顔で制して、次は私のフォーク、ナイフを綺麗にしてくれた。  Jさんの笑顔、私の食器を拭いてくれる指先の美しい事!細くしなやかな指の艶やかさがいつまでも印象的だった。  なんて気持ちの良い行為と礼儀だろうか。とても自然に男性である私を立ててくれる。  あの笑顔と指先と、細くて壊れそうな腰、スラリとした脚、それらがもし私のものになったなら。私だけのために微笑んでくれるなら、それ以上の幸せはないだろう。  私の心はJさんに惹かれてゆく…。
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