誕生日~早紀~

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短大では、新入生全体でのオリエンテーションにより、資格を取得するために必要なことを確認し、授業で使う教科書を買った。 これでようやく、授業が開始となった。 「はぁ…」 初日の授業が終わって早々、実(みのる)が大きな溜息を吐いた。 「どうしたの?溜息吐いちゃって…」 「ピアノ…せめて触るだけでもしとくんだった…」 実(みのる)が思っていた以上に、保育士への道は険しかった。 一番苦しめたのは、ピアノ。 実(みのる)は、今まで一度もピアノと言うものに触れたことがなかった。 「でも、音符は読めるんでしょ?」 早紀は、頭を垂らして歩く実(みのる)を慰めるように言った。 「読めるったって、ギター弾くのに必要なだけしかわからないよ…」 これは、最近になって知ったことだが、実(みのる)は祖父の家でギターの練習をしていたらしい。 引っ越すときに、ギターは置いてきたので、たまに帰った時に弾いていると言っていた。 「大丈夫。練習、つき合うから!」 .
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