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実の肩を、ポンポンッと叩く早紀に励まされながらも、実(みのる)はあることを思い出した。
「…そういえば、もうすぐだったな、おまえの誕生日。どこか行きたい所あるか?」
そう、来週は早紀の誕生日。
「別に良いよ。外に出ると、お金かかるでしょ?」
「…まったく、おまえは…何で俺が最近、バイトに毎日行ってるか知らないだろ?」
高校を卒業した後、早紀も実(みのる)の働くコンビニでバイトを始めていた。
そこで分かったことがひとつ。
春休みに入ってから、実(みのる)は毎日のように、働いている。
早紀の入っていない日も、バイトをしているようだった。
そのせいか、以前のように一緒にいる時間が少なくなった。
「知らないよ。そんな事…そのせいで、ろくに話すことも出来ないのに…」
そう言うと、早紀は下を向いてしまった。
実(みのる)には、その声が今にも泣き出しそうに聞こえ、はっとした。
こんなにも、自分との時間を欲していたのか…と。
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