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月光輝く道を、一匹の老いた白猫がゆったりした歩調で歩いて行く。
そこでふと立ち止まるかと思うや否や、老いた白猫は一鳴きにゃあと鳴いた。
するとそれは見る間に人の形をしはじめ、ついには少年の姿になった。
それは真っ白に輝く髪を短く切り揃えた少年だった。
その姿は何処か幻想的であり、また夢うつつと定まらないような感覚を見た人に与えるような少年だった。
少年は小さく呟いた。
「あぁ…ついに時を迎えたか…。」
少年の声には、感嘆するような響きがあり、また妖しいという表現が相応しい微笑みを浮かべ自分の体を見つめていた。
…ふと、月が陰る。
次に月光が道に当たった時、かの少年はその場には立っていなかった。
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