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柊 木ノ葉(ヒイラギ コノハ)が初めて鱗(ウロ)と出会ったのは、近所の神社の下だった。
それは、薄汚れ痩せこけた老いた白猫だった。
可愛いとか、触りたいとか、そういった感情は浮かばないようなそんな猫だった。
ただ、木ノ葉はその猫が酷く気になった。
だから、その猫を拾い上げると、近くにあった古井戸で水を汲み、洗ってやった。
猫は疲れていたのか、無抵抗だった。
井戸の水は冷たいが、真夏だったのできっとその猫にとっても問題無かったようだった。
はれて洗い終わると、薄汚れた茶色い体は、綺麗な白い体へと変わっていた。
木ノ葉は嬉しくなって思わず微笑んだ。
「貴方、こんな色してたんだね。綺麗だよ。」
猫は耳をぴくんっとさせると、何ともなかったかのようにその場に踞る。
折角洗ったのに…。
少し残念に思いながらも、今度は家に帰って、牛乳を持って行ってやった。
猫は匂いをかいだはいいが、それだけで離れていってしまった。
こんなに痩せこけてるのに…。
「貴方、好き嫌いしてると生きていけないよ?」
心配になってそう言ったものの、やはり猫は口にする気配すらない。
木ノ葉は、ため息と共に諦めたように神社から離れて行った。その後、木ノ葉はやはりなんとなしに歩き回り、近くの漁港までたどり着いた。
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