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そこで目にしたのは、漁師のオジサンが魚をさばいているところだった。
もしかしたら、いらない部分を貰えるかもしれない。
猫は魚が好物というのは定説である。
こうなったら意地でもあの猫に何か食べてもらおう。
木ノ葉はオジサンに事情を話した。
オジサンは、
「おぉ…どうせこの辺のやつは全部捨てちまう予定だったし、嬢ちゃんにやるよ。」
と快く尻尾やら頭やらを一杯くれた。
木ノ葉はそれを持って神社に急いだ。
猫はさっきと同じ場所に踞っていた。
木ノ葉が猫の前にドサッとそれを置くと、猫は驚いたのか体をびくつかせ私を見上げる。
木ノ葉は再び微笑み言った。
「これなら、貴方も食べるんじゃない?」
期待に満ちた瞳で猫を見ていると、猫は恐る恐ると言った感じで魚に近づき―
おもむろに噛みついた。
あとは勢いに任せ自分の倍はあった魚の残骸を一つ残らず平らげてしまった。
そのあとに私を見上げ、にゃあと一鳴きした。
思えば初めてその猫の声を聞いたかもしれない。
それが、鱗との初めての出会いだった。
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