鱗(ウロ)という猫

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その後に木ノ葉は無言で病院を抜けた。 そして傘もささずに歩き回った。 自分の大好きな小路。 お気に入りの風景が見える坂。 鳥の巣がある木の道。 どれも木ノ葉のお気に入りの場所だった。 …しかし、今の木ノ葉にとってはただ悲しく映るだけだった。 そして最後にはあの神社についた。 にゃあ。 木ノ葉は振り返った。 鱗が足元に擦り寄っていた。 木ノ葉は何も言わずに鱗を抱き上げる。 鱗は小首を傾げるように木ノ葉を見る。 木ノ葉はやはり何も言わずにただ鱗に頬を寄せて声をあげずに泣いた。 母親を目の前にして出せなかったこの思いを、一匹の老いた白猫を前にしてやっとぶちまけることが出来たのだった。 この日から、鱗は木ノ葉の家族となった。
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