名取 丈

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ここ陸上自衛隊霞ヶ浦駐屯地では連日の猛暑で気だるい中いつものように基礎訓練がされていた 「…日進月歩で負けないぞ♪我らが誇る自衛隊♪」 ランニングをする陸上自衛官達が数人目に映る 今日も五月蝿く鳴き響く蝉の声とサンサンと照りつける真夏の太陽があたり一面をうざったい雰囲気へといざなう 汗をふきふき一人の自衛官が屯舎へと足早に歩いて行く そうこの男こそ若き日の名取 丈だ まだ新日本軍事法が組まれる前日本軍がまだ自衛隊と呼ばれている頃だった 丈が真上にあがる太陽を見る 「今日も暑いなぁ…またしても35℃を超えるかもな…」 一人でぶつくさいいながらその気だるい足で足早に歩いて行く 屯舎に着くとスゥーと冷房の涼しい空気で一息つく事ができた 窓口で無愛想なメガネをかけた初老の男性事務員に話しかける 「あの…名取丈です 一等陸佐に呼ばれて来たのですが…」 「ああ…少々お待ちを…」 しばらくすると事務員が再び窓口から顔を出す 「向こうの階段で三階へ、そこに表札が出ておりますのでそれを見て陸佐室へ向かって下さい」 「ああ…はい…」 額から汗がしたたり落ちる その汗を拭うと三階へあがる階段へと歩いて行った 三階に着くと表札に各部屋の名前が書かれていた その内の一つ一等陸佐室へと足を運ぶ 部屋の前に立ちノックをすると中から返事が返ってきた 扉を開け中に入る すかさず敬礼をし言った 「今日からこの霞ヶ浦駐屯地に配属になりました 名取丈陸曹であります!宜しくお願いいたします」 するとその目の前に座っていた少しガタイのいい中年男性が言った 「おう!名取君かね…君を待っていたよ」 彼はメガネをかけ角刈りをしている服には陸佐を示す階級章があった いかついのはガタイぐらいで顔は和やかでとっつき易そうな人物だ 陸佐は椅子から立ち上がると側にあるソファーへと名取を誘導した 「まあ掛けたまえ この暑い中ご足労願って…お疲れだろうに」
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