270人が本棚に入れています
本棚に追加
タクシーに乗せられ、しばらく走ると大きな建物が見えた。
「さくらホスピス」
ホスピス・・・?
男は無意識に口に出した。
すると中年の女が慌ててこう言った。
「いやだ、お父さん、心配することないのよ。ちょっと病室がなくて、ホスピスしか病室が空いてなかっただけだから、大丈夫よ」
男は全てを理解した。
今の自分の姿も。
全身の痛みも。
ホスピスに連れて行かれる理由も。
神は全てをやり終えたと言った俺を、人生の終わりの地点へ連れてきたのだ。
神は俺の願いを叶えたのではない。
罰を与えたのだ。
男にはもう、どうすることもできなかった。
女に手を引かれるまま、真っ白な部屋に通され、そこで残りわずかな時間を過ごした。
最初のコメントを投稿しよう!