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険しい表情の夫を気にして、顔を覗き込む妻に大丈夫、と微笑み返して安心させるとこれからのことを思案しはじめた。
「さて、となるとこれからどうする……」
「まさか私の両親があ彼方の両親と組んで来るなんて」
「これでは一筋縄ではいかないな。相手の人数はどうなんだ」
「気配は2、3人。だけど偵察だけと考えるとけっこういるわね」
「それじゃ、今すぐにでもここをでて――」
「そんなことして暗殺者に狙われたら、彼方とこの子達を守れる自信ないわ!!」
妻のあまりの剣幕に押され、「ごめん」と謝り夫は黙りこみ、妻も自分の言ったことに衝撃を受けている様子で黙りこんでしまった。
部屋の中には気まずい沈黙がただただ横たわるだけであった。
その時、その静寂を耐えかねたように片方の赤ん坊が泣き始めた。
慌てて妻が抱きかかえ、あやし始めるがいっこうに泣きやむ気配が無い。
部屋の中に赤ん坊の泣き声が響く中、夫がボソリと呟いた。
「俺たちのせいだな……」
「え……?」
妻が赤ん坊をあやしながら夫を振り返る。その顔には疑問の色が濃く現れていた。
「この子達を守らなきゃいけない立場の俺達が口喧嘩なんかしてたら、そりゃ泣きたくなるわな」
妻はその夫の言葉にただ呆然としていた。そして数瞬の後に妻は答えた。
「そうね、もう私達は2人だけじゃないものね、4人の家族ですものね!」
そうした会話をしていてふと気付くと赤ん坊は泣き止んでおり、両親の仲直りに安心したのか満面の笑みで笑っていた。
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