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その笑顔に応えるように二人は頷きあった。
「この子達は私達が守らなきゃいけない、この命に代えても」
妻が言い、夫も再度頷いた。
「この笑顔がいつまでも続くように。その為には……」
それから一週間後、二人は住み慣れたアパートの前に向かい会いお互いを見つめていた。その胸に双子を一人ずつ抱いて。最後の会話を交すために。
「遂にきてしまったわねこの日が……」
涙ぐむ妻に努めて明るく振る舞う夫が言う。
「馬鹿、泣くなよ」
「泣いてなんかないわよ!」
強がってみるが妻の頬には涙が伝う。
「子供達が心配しないように笑顔で分かれよう」
妻は頷き無理矢理笑顔を作った。
「そういう貴方こそ半泣きじゃない」
「うるさい……そんなことより手紙忘れるなよ」
「分かってるわよ!」
二人は赤ん坊の成長報告の手紙を月一で出すことに決めていた。
「それじゃ、さよならロイ、ルナ、二人とも愛してる」
「さよなら、ミナ、我が愛しい人。そして最愛の息子レイ」
二人は別れの言葉を言うと正反対の方向に歩き出した。それぞれの捨てたはずの生まれた場所へ。
序章・完
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