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「おい、いい加減に―― 」
「あ、やっと出てきてくれましたね 」
やはりと言うべきか、大きなリボンが特徴的なあいつがいた。十人いたらその全員が振り返るような美貌に世の男どもの心の一切を奪っていきそうな微笑みを浮かべながらこっちに手を振ってくる。
「あんなことされたら近所迷惑になるだろっ 」
「何十分も待たせている時点で充分に近所迷惑な気もしますけどね。 あ、通りを歩いていたおば様方からいつも大変ねぇと言われましたよ」
「……そうかい 」
迷惑になっている自覚があるならさっさと帰ったらいいのに。なんでこいつはいつもいつもこうして僕が出てくるのを待ってるんだろう。
「んで、なんでうちに来たんだ? 」
毎回同じ疑問を口に出さないまま用件を聞く。
「親戚の家から胡瓜がたくさん送られてきたので浅漬けを作ってみたんですよ。作りすぎてしまったので、おすそ分けにきました 」
かなり上手く作れたんだろうか、機嫌の良さそうな声が返ってきた。こいつの料理の腕前はかなりのものなので、その浅漬けはすごく美味しいんだろう。
「ということなので、足も疲れてきましたしお邪魔しますね 」
そう言って僕を押しのけて家の中に入っていく。厚かましさもかなりのものだと思いながら僕も家に入っていった。
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