「にゃう」「狐」「提灯」

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「その…ありがとう」 屋台巡りをしている時だった、こんこんが顔を赤らめながらそう言ってきたのは。 「どうした?突然」 「いや、あんたが…優しいから」 「…そうか?」 「だって普通、見ず知らずの女の子のためにここまでしないでしょ?」 あぁ、なるほどね 「見ず知らずでもこんこんだからな」 「えっ…?」 「ほかの人間がこんこんに付きまとわれたら迷惑だろ?だから俺が面倒見てやってんの。ありがたく思えよ?」 目を見開いたこんこんを茶化す。途端に顔を真っ赤にして怒鳴る 「どういうことよそれっ」 「そのまんまの意味だよ」 子供のころに助けようとした動物に似てるって言っていいかわからなかったから。 「そうだ、ちょっとついて来な」 「…?」 「いいとこがあんだよ」 「いいとこ?……っ?」 こんこんの手を握って引っ張る……さっきびっくりさせてくれたお返しだ。 長い階段を上り、鳥居をくぐったその先は 「ここは…神社?」 「だったとこだな」 そこにはもう社はなく、所々雑草が生えている。 「なんでこんな所に?」 いつもは来ないこの場所は 「ここが一番空に近いから」 年に一日、この日だけ 「こんこんの探しものが見つかるんじゃないかなって思ってさ」 最高の、展望台になる 空が、瞬いた。 「すごい…」 空を見ながらこんこんが呟いた。 「だろ?俺しか来ない穴場なんだぜ」 俺も空を見ながら言った。 「探しもの、これで合ってるか?」 「うん、きっと…」 「きっとって、あいまいだな」 「そうね」 俺もこんこんも笑いながら話す。 「見つかったらどうなんだ?」 「とくに何もないかな。あ、でも毎年ここに来るわ」 「…なんでまた?」 「約束してるし…来たいから」 「約束?どんな?」 「秘密」 「秘密かよ」 「いいでしょ?アタシみたいなかわいい女の子と毎年会えるんだからさ」 「…それもそうだな」 笑い合う俺達の頭上では色とりどりの光が空を舞っていた。  
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