第1話…魔女

2/8
7811人が本棚に入れています
本棚に追加
/313ページ
バシャア!! 少年は、バケツいっぱいの水をかけられて全身がびしょ濡れになった。 そんな少年を見て、みんな…楽しそうに笑っている。 少年の名前は… 『藤田 香(フジタ カオル)』 16歳。 高校一年生。 身長163㎝。 やや長い黒髪、大きな二重の目。 細身で色白。 女のような名前だが、れっきとした男だ。 薄汚いトイレの隅で、びしょ濡れの彼は…イジメを受けていた。主犯格のクラスメイト『草野』がカオルに言う。 草野「今日も、残暑厳しいよなぁ~こんな日は、水をまいて少しでも涼しくしなくちゃ…なぁ?」 ビシャアァァァァ!! 草野の仲間が、蛇口にホースを付けて水をまく。 カオルは、顔面にその水を浴びせかけられる。 カオル「…や、めて…」 小さな声で言ったが…草野とその仲間達の笑い声でかき消されてしまった。 三時間目の授業が開始される頃には…教室にカオルの姿はなかった。 教師「…藤田はどうした?」 草野「具合が悪いって言って早退しましたぁ~」 教師「また、無断で早退か!?一体、あいつは何を考えているんだ…」 ・ ・ ・ カオルを助けてくれる人間など、学校には一人もいない。 ブレザーを小脇に抱え、バッグからハンカチを取り出して顔を拭く。 空を見上げると、青く…澄みきっている。 カオル「空は、あんなに青いのに…僕はいつも曇ってる。僕の世界は、真っ暗だ…」 おっとりとした性格の彼は、嫌な事でもハッキリと言えなかった。そんな性格が災いし…最初のうちはからかわれ…それがじょじょにエスカレートしていき、今にいたる。 親は、共働きで二人共帰りが遅い。成績優秀なカオルの事を、あまり心配してはいない。 親に心配をかけたくないカオルは、イジメられている事を告げられずにいた。 カオルが唯一心を許せる人間は、幼い頃から知っている近所の骨董品屋のお爺さんだけだった。 自然とその足は、骨董品屋へと向かう…
/313ページ

最初のコメントを投稿しよう!